タグ:憂國Wiki, 三島由紀夫名言集, 恋愛, 希望, 哲学, 真理, 処世, 人生, 政治
2021/08/29 (日) 更新
No | 分類 | 名言 | 作品 | 書籍 |
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1 | 恋愛 | 恋人同士といふものは仕馴れた役者のように、予め手順を考へた舞台装置の上で愛し合うものである | 日曜日 | 『決定版 三島由紀夫全集 18巻』 |
2 | 恋愛 | 恋愛とは、勿論、 | 純白の夜 | 『純白の夜』 |
3 | 恋愛 | 裏切りは、かならずしも悪人と善人のあひだでおこるとはかぎらない。 | あなたは現在の恋人と結婚しますか? | 『決定版 三島由紀夫全集 33巻』 |
4 | 恋愛 | 僕はいはゆる美人を見ると、美しいなんて思つたことはありません。ただ欲望を感じるだけです。 不美人のはうが美といふ観念からすれば、純粋に美しいのかもしれません。何故つて、醜い女なら、欲望なしに見ることができますからね。 | 女神 | 『女神』 |
5 | 恋愛 | 美しい女と二人きりで歩いてゐる男は頼もしげにみえるのだが、女二人にはさまれて歩いてゐる男は道化じみる。 | 春子 | 『真夏の死―自選短編集』 |
6 | 恋愛 | 年をとらせるのは肉体じやなくつて、もしかしたら心かもしれないの。心のわづらひと衰へが、内側から体に反映して、みにくい皺やしみを作つてゆくのかもしれないの。 | 黒蜥蜴 | 『若人よ蘇れ・黒蜥蜴 他一篇』 |
7 | 恋愛 | 男性は、安楽を100パーセント好きになれない動物だ。また、なつてはいけないのが男である。 | あなたは現在の恋人と結婚しますか? | 『決定版 三島由紀夫全集 33巻』 |
8 | 恋愛 | 男といふものは、もし相手の女が、彼の肉体だけを求めてゐたのだとわかると、一等自尊心を鼓舞されて、大得意になるといふ妙なケダモノであります。 | 痴漢を歓迎すべし | 『不道徳教育講座』 |
9 | 恋愛 | 人間をいちばん残酷にするのは、愛されてゐるといふ意識だよ。 | 禁色 | 『禁色』 |
10 | 恋愛 | 神聖なものほど猥褻だ。だから恋愛より結婚のはうがずつと猥褻だ。 | 鏡子の家 | 『鏡子の家』 |
11 | 恋愛 | 女性はそもそも、いろんな点でお月さまに似てをり、お月さまの影響を受けてゐるが、男に比して、すぐ肥つたりすぐやせたりしやすいところもお月さまそつくりである。 | 反貞女大学 | 『反貞女大学』 |
12 | 恋愛 | 時間を支配しているのは女であって、男じゃない。妊娠十ヵ月の時間、これは女の持物だからね。だから女は時間に遅れる権利があるんだよ。 | 寺山修司との対談「エロスは抵抗の拠点になり得るか」 | 『決定版 三島由紀夫全集 40巻』 |
13 | 恋愛 | 私を美しいと云つた男はみんな死んぢまつた。だから、今ぢや私はかう考へる。私を美しいと云ふ男は、みんなきつと死ぬんだと。 | 卒塔婆小町 | 『近代能楽集』 |
14 | 恋愛 | 潔癖さといふものは、欲望の命ずる一種のわがままだ。 | 仮面の告白 | 『仮面の告白』 |
15 | 恋愛 | 軽蔑とは、女の男に対する永遠の批評である。 | 反貞女大学 | 『反貞女大学』 |
16 | 恋愛 | 愛は断じて理解ではない。 | 批評家に小説がわかるか | 『文学的人生論』 |
17 | 恋愛 | 愛するということにかけては、女性こそ専門家で、男性は永遠の素人である。 | 愛するといふこと | 『決定版 三島由紀夫全集 36巻』 |
18 | 恋愛 | どんな女にも、苦悩に対する共感の趣味があるものだが、それは苦悩といふものが本来男性的な能力だからである。 | 純白の夜 | 『純白の夜』 |
19 | 恋愛 | いくら乱れた世の中でも、一本筋の通つたまじめな努力家の青年はゐるもんだよ。 小心で優柔不断らしい女が、男を不幸にしてゐる | お嬢さん | 『お嬢さん』 |
20 | 恋愛 | 女を抱くとき、われわれは大抵、顔か乳房か局部か太腿かをバラバラに抱いてゐるのだ。それを総括する「肉体」といふ観念の下に。 | 鍵のかかる部屋 | 『鍵のかかる部屋』 |
21 | 恋愛 | 虚栄心、自尊心、独占欲、男性たることの対社会的プライド、男性としての能力に関する自負、……かういふものはみんな社会的性質を帯びてゐて、これがみんな根こそぎにされた悩みが、男の嫉妬を形づくります。 男の嫉妬の本当のギリギリのところは、体面を傷つけられた怒りだと断言してもよろしい。 | いはゆる『よろめき』について | 『不道徳教育講座』 |
22 | 恋愛 | 愛から嫉妬が生まれるやうに、嫉妬から愛が生まれることもある。 | 反貞女大学 | 『反貞女大学』 |
23 | 恋愛 | 若い女といふものは誰かに見られてゐると知つてから窮屈になるのではない。 ふいに体が固くなるので、誰かに見詰められてゐることがわかるのだが。 | 白鳥 | 『女神』 |
24 | 恋愛 | あまりに強度の愛が、実在の恋人を超えてしまふといふことはありうる。 | 班女について | 『決定版 三島由紀夫全集 29巻』 |
25 | 恋愛 | 初恋に勝つて人生に失敗するのはよくある例で、初恋は破れる方がいいといふ説もある。 | 冷血熱血(小坂・オルチス戦観戦記) | 『三島由紀夫スポーツ論集』 |
26 | 恋愛 | 愛は絶望からしか生まれない。 精神対自然、かういふ了解不可能なものへの精神の運動が愛なのだ。 | 禁色 | 『禁色』 |
27 | 恋愛 | 女の部屋は一度ノックすべきである。しかし二度ノックすべきぢやない。 さうするくらゐなら、むしろノックせずに、いきなりドアをあけたはうが上策なのである。 女といふものは、いたはられるのは大好きなくせに、顔色を窺はれるのはきらふものだ。 いつでも、的確に、しかもムンズとばかりにいたはつてほしいのである。 | 複雑な彼 | 『複雑な彼』 |
28 | 恋愛 | 愛はみんな怖しいんですよ。愛には法則がありませんから。 | 班女 | 『近代能楽集』 |
29 | 恋愛 | 恋と犬とはどつちが早く駆けるでせう。さてどつちが早く汚れるでせう。 | 綾の鼓 | 『近代能楽集』 |
30 | 恋愛 | 処女だけに似つかはしい種類の淫蕩さといふものがある。 それは成熟した女の淫蕩とはことかはり、微風のやうに人を酔はせる。 | 仮面の告白 | 『仮面の告白』 |
31 | 恋愛 | 恋愛では手放しの献身が手放しの己惚れと結びついてゐる場合が決して少なくない。 しかし計量できない天文学的数字の過剰な感情の中にとぢこめられてゐる女性といふものは、はたで想像するほど男をうるさがらせてはゐないのだ。 | 好きな女性 | 『決定版 三島由紀夫全集 28巻』 |
32 | 恋愛 | 動物になるべきときにはちやんと動物になれない人間は不潔であります。 | 第一の性 | 『第一の性』 |
33 | 恋愛 | 恋といふものは、そつのない調和よりも、むしろ情緒のある不釣合のはうを好くものです。 | 不実な洋傘 | 『決定版 三島由紀夫全集 17巻』 |
34 | 恋愛 | 世間ではどんなに英雄的に見える男でも、家庭では甲羅ぼしをするカメのやうなものである。 “男性を偶像化すべからず” 職場での彼、デート中の彼から70%以上の魅力を差し引いたものが、家庭での彼の姿。 | あなたは現在の恋人と結婚しますか? | 『決定版 三島由紀夫全集 33巻』 |
35 | 恋愛 | 別れてゐることが苦痛なら、逢つてゐることも苦痛でありうるし、逢つてゐることが歓びならば、別れてゐることも歓びであつてならぬといふ道理はない。 | 春の雪 | 『豊饒の海 第一巻 春の雪』 |
36 | 恋愛 | もし永遠があるとすれば、それは今だけなのでございますわ。 | 春の雪 | 『豊饒の海 第一巻 春の雪』 |
37 | 希望 | 自分の死の分量を明確に見極めた人が、これからの世界で本当に勇気を持つた人間になるだらう。まづ個人が復活しなければならないのだ。 | 死の分量 | 『決定版 三島由紀夫全集 28巻』 |
38 | 希望 | 個人が組織を倒す、といふのは善である。 | 『サムライ』について | 『決定版 三島由紀夫全集 34巻』 |
39 | 希望 | どんな時代にならうと、権力のもつとも深い実質は若者の筋肉だ。 | わが友ヒットラー | 『サド侯爵夫人・わが友ヒットラー』 |
40 | 希望 | 青春の特権といえば、一言を以つてすれば無知の特権であろう。 | 私の遍歴時代 | 『太陽と鉄・私の遍歴時代』 |
41 | 希望 | 不安こそ、われわれが若さからぬすみうるこよない宝だ。 | 暁の寺 | 『豊饒の海 第三巻 暁の寺』 |
42 | 希望 | 文学では、(日本の芸能の多くがさうであるやうに)、肉体が老ひ朽ちてから、芸術の青春がはじまるといふ恵みがある。 | 私の遍歴時代 | 『太陽と鉄・私の遍歴時代』 |
43 | 希望 | 詩人とは、自分の青春に殉ずるものである。青春の形骸を一生引きずつてゆくものである。 詩人的な生き方とは、短命にあれ、長寿にあれ、結局、青春と共に滅びることである。 | 佐藤春夫氏についてのメモ | 『決定版 三島由紀夫全集 29巻』 |
44 | 希望 | ある小説がそこに存在するおかげで、どれだけ多くの人々が告白を免かれてゐることであらうか。 | 小説とは何か | 『小説読本』 |
45 | 希望 | 芸術作品の形成がそもそも死と闘ひ死に抵抗する営為なのである。 | 日記 | 『決定版 三島由紀夫全集 31巻』 |
46 | 希望 | 愛の奥処には、寸分たがはず相手に似たいといふ不可能な熱望が流れてゐはしないだらうか? | 仮面の告白 | 『仮面の告白』 |
47 | 希望 | 「足が地につかない」ことこそ、男性の特権であり、すべての光栄のもとであります。 | 第一の性 | 『第一の性』 |
48 | 希望 | 文学は、どんなに夢にあふれ、又、読む人の心に夢を誘ひ出さうとも、第一歩は、必ず作者の夢が破れたところに出発してゐる。 | 秋冬随筆 | 『決定版 三島由紀夫全集 33巻』 |
49 | 希望 | かつて向う岸にゐたと思はれた人々は、もはや私と同じ岸にゐるやうになつた。 すでに謎はなく、謎は死だけになつた。 | 太陽と鉄 | 『太陽と鉄・私の遍歴時代』 |
50 | 希望 | 一つの生をあまりにも純粋に究極的に生きようとすると、人はおのづから、別の生の存在の予感に到達するのではなからうか。 | 暁の寺 | 『豊饒の海 第三巻 暁の寺』 |
51 | 哲学 | 理想的な「他人」はこの世にはないのだ。滑稽なことだが、屍体にならなければ、人は「親密な他人」になれない。 | 牝犬 | 『決定版 三島由紀夫全集 18巻』 |
52 | 哲学 | 無神論も、徹底すれば徹底するほど、唯一神信仰の裏返しにすぎぬ。 無気力も、徹底すれば徹底するほど、情熱の裏返しにすぎぬ。 | 川端康成氏再説 | 『決定版 三島由紀夫全集 31巻』 |
53 | 哲学 | 男性は本質を愛し、女性は習慣を愛する | 青の時代 | 『青の時代』 |
54 | 哲学 | 男の世界は思ひやりの世界である。 男の社会的な能力とは思ひやりの能力である。 | 葉隠入門 | 『葉隠入門』 |
55 | 哲学 | 正しい狂気といふものがあるのだ。 | 小説家の休暇 | 『小説家の休暇』 |
56 | 哲学 | 人生とは何だ? 人生とは失語症だ。世界とは何だ? 世界とは失語症だ。歴史とは何だ?歴史とは失語症だ。芸術とは? 恋愛とは? 政治とは? 何でもかんでも失語症だ。 | 獣の戯れ | 『獣の戯れ』 |
57 | 哲学 | 人生が生きるに値ひしないと考へることは容易いが、それだけにまた、生きるに値ひしないといふことを考へないでゐることは、多少とも鋭敏な感受性をもつた人には困難である。 | 愛の渇き | 『愛の渇き』 |
58 | 哲学 | 私は、言論と日本刀というものは同じもので、何千万人相手にしても、俺一人だというのが言論だと思うのです。一人の人間を大勢で寄ってたかってぶち壊すのは、言論ではなくて、そういうものを暴力という。つまり一人の日本刀の言論だ。 | 国家革新の原理 | 『文化防衛論』 |
59 | 哲学 | 私があるとき死はない、死があるとき私はない。 だから人間は死を怖れることはないのだ。 | 永すぎた春 | 『永すぎた春』 |
60 | 哲学 | 死は事実にすぎぬ。行為の死は、自殺と言ひ直すべきだらう。人は自分の意志によつて生れることはできぬが、意志によつて死ぬことはできる。これが古来のあらゆる自然哲学の根本命題だ。 | 禁色 | 『禁色』 |
61 | 哲学 | 死において、自殺といふ行為と、生の全的な表現との同時性が可能であることは疑ひを容れない。最高の瞬間の表現は死に俟たねばならない。 これには逆証明が可能だと思はれる。 | 禁色 | 『禁色』 |
62 | 哲学 | 愛といふ言葉は、日本語ではなくて、多分キリスト教から来たものであらう。日本語としては「恋」で十分であり、日本人の情緒的表現の最高のものは「恋」であつて、「愛」ではない。 | 愛国心 | 『終わり方の美学 戦後ニッポン論考集』 |
63 | 哲学 | この世には最高の瞬間といふものがある。この世における精神と自然との和解、精神と自然との交合の瞬間だ。 | 禁色 | 『禁色』 |
64 | 哲学 | あらゆる文体は形容詞の部分から古くなると謂はれてゐる。 つまり形容詞は肉体なのである。青春なのである。 | 禁色 | 『禁色』 |
65 | 哲学 | 音楽は生活必需品でなくても、人生の必需品、むしろその本質的なものとも思はれる。 「今そこにないものへの誘惑」にこそ、生の本質があるからである。 | 誘惑 ─音楽のとびら | 『決定版 三島由紀夫全集 34巻』 |
66 | 哲学 | 人間が或る限度以上に物事を究めようとするときに、つひにはその人間と対象とのあひだに一種の相互転換が起り、人間は異形に化するのかもしれない。 | 三熊野詣 | 『殉教』 |
67 | 哲学 | 自分の美しさを知つてゐても、鏡によらずしてはそれを見ることができないといふのは宿命的なことだ。 自分が美しいといふ認識は、たえず自分から逃げてゆくあいまいな不透明な認識であつた。 結局この世では他人の美がすべてなのだ。 | 女神 | 『女神』 |
68 | 哲学 | 行為とは、宿命と自由意志との間に生れる鬼子であつて、人は本当のところ、自分の行為が、宿命のそそのかしによるものか、自由意志のあやまちによるものか、知ることなど決してできない。 | 裸体と衣装 | 『裸体と衣装』 |
69 | 哲学 | 相反するものはその極致において似通ひ、お互ひにもつとも遠く隔たつたものは、ますます遠ざかることによつて相近づく。 | 太陽と鉄 | 『太陽と鉄・私の遍歴時代』 |
70 | 哲学 | たとへば情熱、たとへば理想、たとへば知性、……何でもかまはないが、人間によつて価値づけられたもののかういふ体系を、誰も抜け出すことができない。 逆を行けば裏返しになるだけのことだ。 | 川端康成氏再説 | 『決定版 三島由紀夫全集 31巻』 |
71 | 真理 | 不安は奇体に人の顔つきを若々しくする。 | 毒薬の社会的効用について | 『殉教』 |
72 | 真理 | 男が女より強いのは、腕力と知性だけで、腕力も知性もない男は、女にまさるところは一つもない。 | 第一の性 | 『第一の性』 |
73 | 真理 | 打算のない愛情とよく言ひますが、打算のないことを証明するものは、打算を証明するものと同様に、「お金」の他にはありません。打算があつてこそ「打算のない行為」もあるのですから、いちばん純粋な「打算のない行為」は打算の中にしかありえないわけです。 | 宝石売買 | 『決定版 三島由紀夫全集 17巻』 |
74 | 真理 | 戦争が道徳を失はせたといふのは嘘だ。道徳はいつどこにでもころがつてゐる。しかし運動をするものに運動神経が必要とされるやうに、道徳的な神経がなくては道徳はつかまらない。戦争が失はせたのは道徳的神経だ。 | 慈善 | 『決定版 三島由紀夫全集 17巻』 |
75 | 真理 | 青年の苦悩は、隠されるときもつとも美しい | 青年像 | 『決定版 三島由紀夫全集 34巻』 |
76 | 真理 | 政治的スローガンとか、思想とか、さういふ痛くも痒くもないものには、人間は喜んで普遍性と共有性を認めます。毒にも薬にもならない古くさい建築や美術品は、やすやすと人類共有の文化的遺産になります。 | 美しい星 | 『美しい星』 |
77 | 真理 | 真の危険を犯すものは理性であり、その勇気も理性からだけ生れる | 暁の寺 | 『豊饒の海 第三巻 暁の寺』 |
78 | 真理 | 女の人には、自分で直感的に見た鏡が、いちばん気に入る肖像画なんです。それ以上のものはありませんよ。 | 女神 | 『女神』 |
79 | 真理 | 事件に直面して、直面しながら、理解することは困難である。理解は概ね後から来て、そのときの感動を解析し、さらに演繹して、自分にむかつて説明しようとする。 | 真夏の死 | 『真夏の死―自選短編集』 |
80 | 真理 | 今の日本の大威張りの根拠は、みんな西洋発明品のおかげである。 これはそもそも、大東亜戦争の航空機についてさえ言えることで、あの戦争が日本刀だけで戦ったのなら威張れるけれども、みんな西洋の発明品で、西洋相手に戦ったのである。 ただ一つ、真の日本的武器は、航空機を日本刀のように使って斬死した特攻隊だけである。 | お茶漬ナショナリズム | 『若きサムライのために』 |
81 | 真理 | 今の時代はますます複雑になって、新聞を読んでも、テレビを見ても、真相はつかめない。そういうときに何があるかといえば、自分で見にいくほかないんだよ。 | 鶴田浩二との対談「刺客と組長 男の盟約」 | 『決定版 三島由紀夫全集 40巻』 |
82 | 真理 | 好奇心には道徳がないのである。もしかするとそれは人間のもちうるもつとも不徳な欲望かもしれない。 | 仮面の告白 | 『仮面の告白』 |
83 | 真理 | 五十歳の美女は二十歳の美女には絶対にかなはない。 美女と醜女とのひどい階級差は、美男と醜男との階級差とは比べものにならない。 | をはりの美学「美貌のをはり」 | 『行動学入門』 |
84 | 真理 | 経済学の学説なんぞといふものは、どつちみち如意棒のやうなもので、エイッと声をかけて、耳へ入るだけの小ささに変へてしまへばやすやすと握りつぶせるのである。そもそも唯物論は、「金で買へないものは何もない、どんな形の幸福も金で買へる」といふ資本主義的偏見の私生児なのである。感動すまいとする分析家は、感動以上の誤りを犯す場合がままある。 | 青の時代 | 『青の時代』 |
85 | 真理 | 偽悪者たることは易しく、反抗者たり否定者たることはむしろたやすいが、あらゆる外面的内面的要求に飜弄されず、自身のもつとも蔑視するものに万全を尽くすことは、人間として無意味なことではない。「最高の偽善者」とはさういふことであり、物事が決して簡単につまらなくなつたりしてしまはない人のことである。人間は自由を与へられれば与へられるほど幸福になるとは限らない。 | 最高の偽善者として――皇太子殿下への手紙 | 『決定版 三島由紀夫全集 17巻』 |
86 | 真理 | 感傷といふものが女性的な特質のやうに考へられてゐるのは明らかに誤解である。 感傷的といふことは男性的といふことなのだ。 | 青の時代 | 『青の時代』 |
87 | 真理 | 寡黙な人間は、寡黙な秘密を持つものである。 | 日曜日 | 『決定版 三島由紀夫全集 18巻』 |
88 | 真理 | ヒットラーは政治的天才であつたが、英雄ではなかつた。英雄といふものに必要な、爽やかさ、晴れやかさが、彼には徹底的に欠けてゐた。ヒットラーは、二十世紀そのもののやうに暗い。 | 『わが友ヒットラー』覚書 | 『サド侯爵夫人・わが友ヒットラー』 |
89 | 真理 | どんなに平和な装ひをしてゐても「世界政策」といふことばには、ヤクザの隠語のやうな、独特の血なまぐささがある。 | 終末感からの出発 | 『三島由紀夫』(ちくま日本文学10) |
90 | 真理 | この世で一等強力なのは愛さない人間だね。 | 美徳のよろめき | 『美徳のよろめき』 |
91 | 真理 | 人間はあやまちを犯してはじめて真理を知るのである。 | 青の時代 | 『青の時代』 |
92 | 真理 | 人間をいちばん残酷にするのは、愛されてゐるといふ意識だよ。愛されない人間の残酷さなんて知れたもんだ。たとえば、ヒューマニストというやつはきまつて醜男だ。 | 禁色 | 『禁色』 |
93 | 真理 | 老夫妻の間の友情のやうなものは、友情のもつとも美しい芸術品である。 | 女の友情について | 『決定版 三島由紀夫全集 27巻』 |
94 | 真理 | 三千人と恋愛をした人が、一人と恋愛をした人に比べて、より多くについて知つてゐるとはいへないのが、人生の面白味ですが、同時に、小説家のはうが読者より人生をよく知つてゐて、人に道標を与へることができる、などといふのも完全な迷信です。 | 小説家を尊敬するなかれ | 『不道徳教育講座』 |
95 | 真理 | 無秩序が文学に愛されるのは、文学そのものが秩序の化身だからだ。 | 恋する男 | 『決定版 三島由紀夫全集 26巻』 |
96 | 真理 | 人生には濃い薄い、多い少ない、ということはありません。 誰にも一ぺんコッキリの人生しかないのです。 | 小説家を尊敬するなかれ | 『不道徳教育講座』 |
97 | 真理 | 貞女とは、多くのばあひ、世間の評判であり、その世間をカサに着た女の鎧であります。 | 反貞女大学 | 『反貞女大学』 |
98 | 真理 | 芸術家といふのは自然の変種です。 | 反貞女大学 | 『反貞女大学』 |
99 | 真理 | ある女は心で、ある女は肉体で、ある女は脂肪で夫を裏切るのである。 | 反貞女大学 | 『反貞女大学』 |
100 | 真理 | 真の芸術家は招かれざる客の嘆きを繰り返すべきではあるまい。彼はむしろ自ら客を招くべきであらう。 | 招かれざる客 | 『夜告げ鳥』 |
101 | 真理 | われわれが美しいと思ふものには、みんな危険な性質がある。 温和な、やさしい、典雅な美しさに満足してゐられればそれに越したことはないのだが、それで満足してゐるやうな人は、どこか落伍者的素質をもつてゐるといつていい。 | 美しきもの | 『決定版 三島由紀夫全集 29巻』 |
102 | 真理 | 私はかつて、真のでくのばうを演じ了せた意識家を見たことがない。 | 小説家の休暇 | 『小説家の休暇』 |
103 | 真理 | 必要から生れたものには、必要の苦さが伴ふ。この想像力には甘美なところがみじんもなかつた。 | 暁の寺 | 『豊饒の海 第三巻 暁の寺』 |
104 | 真理 | 美人の定義は沢山着れば着るほどますます裸かにみえる女のことである。 | 家庭裁判 | 『決定版 三島由紀夫全集 18巻』 |
105 | 真理 | 大ていわれわれが醜いと考へるものは、われわれ自身がそれを醜いと考へたい必要から生れたものである。 | 手長姫 | 『手長姫 英霊の声―1938-1966―』 |
106 | 真理 | 変はり者と理想家とは、一つの貨幣の両面であることが多い。 どちらも、説明のつかないものに対して、第三者からはどう見ても無意味なものに対して、頑固に忠実にありつづける。 | 第一の性 | 『第一の性』 |
107 | 真理 | 相容れないものが一つになり、反対のものがお互ひを照らす。それがつまり美といふものだ。 陽気な女の花見より、悲しんでゐる女の花見のはうが美しい。 | 熊野 | 『近代能楽集』 |
108 | 真理 | どんな世の中にならうとも、女の美しさは操の高さの他にはないのだ。 男の値打も、醜く低い心の人たちに屈しない高い潔らかな精神を保つか否かにあるのだ。 さういふ磨き上げられた高い心が、結局永い目で見れば、世のため人のために何ものよりも役立つのだ。 | 人間喜劇 | 『決定版 三島由紀夫全集 17巻』 |
109 | 真理 | 羞恥心のない知性は、羞恥心のない肉体よりも一そう醜い。 ロダンの彫刻「考へる人」では、肉体の力と、精神の謙抑が、見事に一致してゐる。 | ボディ・ビル哲学 | 『三島由紀夫スポーツ論集』 |
110 | 真理 | 漫画は現代社会のもつともデスペレイトな部分、もつとも暗黒な部分につながつて、そこからダイナマイトを仕入れて来なければならないのだ。 あらゆる倒錯は漫画的であり、あらゆる漫画は幾分か倒錯的である。 | わが漫画 | 『決定版 三島由紀夫全集 29巻』 |
111 | 真理 | 歴史はいつも崩壊する。又次の 歴史の形成と崩壊とは同じ意味をしか持たないかのやうだ。 | 春の雪 | 『豊饒の海 第一巻 春の雪』 |
112 | 真理 | 優雅といふものは禁を犯すものだ。それも至高の禁を。 | 春の雪 | 『豊饒の海 第一巻 春の雪』 |
113 | 真理 | 恋も忠も源は同じであつた。 | 奔馬 | 『豊饒の海 第二巻 奔馬』 |
114 | 真理 | 悪は時として、静かな植物的な姿をしてゐるものだ。結晶した悪は、白い錠剤のやうに美しい。 | 天人五衰 | 『豊饒の海 第四巻 天人五衰』 |
115 | 真理 | 人間の美しさ、肉体的にも精神的にも、およそ美に属するものは、無知と迷蒙からしか生れないね。知つてゐてなほ美しいなどといふことは許されない。 | 天人五衰 | 『豊饒の海 第四巻 天人五衰』 |
116 | 真理 | 人間は自分より永生きする家畜は愛さないものだ。 | 天人五衰 | 『豊饒の海 第四巻 天人五衰』 |
117 | 処世 | 男の虚栄心は、虚栄心がないやうに見せかけることである。 | 虚栄について | 『三島由紀夫語録』 |
118 | 処世 | 精神分析を待つまでもなく、人間のつく嘘のうちで、「一度も嘘をついたことがない」といふのは、おそらく最大の嘘である。 | 音楽 | 『音楽』 |
119 | 処世 | 世間が若い者に求める役割は、欺され易い誠実な聴き手といふことで、それ以上の何ものでもない。 | 天人五衰 | 『豊饒の海 第四巻 天人五衰』 |
120 | 処世 | 世界が必ず滅びるといふ確信がなかつたら、どうやつて生きてゆくことができるだらう。 | 鏡子の家 | 『鏡子の家』 |
121 | 処世 | 崇高なものが現代では無力で、滑稽なものにだけ野蛮な力がある。 | 禁色 | 『禁色』 |
122 | 処世 | 女といふものは、自分を莫迦だと知る瞬間に、それがわかるくらい自分は利巧な女だといふ循環論法に陥るのですね。 | 愛の渇き | 『愛の渇き』 |
123 | 処世 | 自殺しようとする人間は往々死を不真面目に考へてゐるやうにみられる。否、彼は死を自分の理解しうる幅で割切つてしまふことに熟練するのだ。かかる浅墓さは不真面目とは紙一重の差であらう。しかし紙一重であれ、混同してはならない差別だ。 | 盗賊 | 『盗賊』 |
124 | 処世 | 幸福つて、何も感じないことなのよ。幸福つて、もつと鈍感なものよ。幸福な人は、自分以外のことなんか夢にも考へないで生きてゆくんですよ。 | 夜の向日葵 | 『鹿鳴館』 |
125 | 処世 | 空虚な目標であれ、目標をめざして努力する過程にしか人間の幸福が存在しない。 | 小説家の息子 | 『三島由紀夫語録』 |
126 | 処世 | 何のために生きてゐるかわからないから生きてゐられるんだわ。 | 盗賊 | 『盗賊』 |
127 | 処世 | ユーモアと冷静さと、男性的勇気とは、いつも車の両輪のやうに相伴ふもので、ユーモアとは理知のもつともなごやかな形式なのであります。 | 文章読本 | 『文章読本』 |
128 | 処世 | やたらと人に弱味をさらけ出す人間のことを、私は躊躇なく「無礼者」と呼びます。それは社会的無礼であつて、われわれは自分の弱さをいやがる気持から人の長所をみとめるのに、人も同じやうに弱いといふことを証明してくれるのは、無礼千万なのであります。 | 告白するなかれ | 『不道徳教育講座』 |
129 | 処世 | なぜ大人は酒を飲むのか。大人になると悲しいことに、酒を呑まなくては酔へないからである。 子供なら、何も呑まなくても、忽ち遊びに酔つてしまふことができる。 | 社会料理三島亭 | 『決定版 三島由紀夫全集 31巻』 |
130 | 処世 | そんなに、「どうせ私なんぞ」式外交ばかりやらないで、たまにはゴテてみたらどうだらう。さうすることによつて、自分の何ほどかの力が確認されるといふものであります。 | 何かにつけてゴテるべし | 『不道徳教育講座』 |
131 | 処世 | あまりに永い苦悩は人を愚かにする。 苦悩によつて愚かにされた人は、もう歓喜を疑ふことができない。 | 愛の渇き | 『愛の渇き』 |
132 | 処世 | 「強み」とは何か。知恵に流されぬことである。分別に溺れないことである。 | 葉隠入門 | 『葉隠入門』 |
133 | 処世 | 精神を凌駕することのできるのは習慣という怪物だけなのだ。 | 美徳のよろめき | 『美徳のよろめき』 |
134 | 処世 | この世には無害な道楽なんて存在しないと考えたはうが賢明だ。 | 鍵のかかる部屋 | 『鍵のかかる部屋』 |
135 | 処世 | 幸福がつかのまだといふ哲学は、不幸な人間も幸福な人間もどちらも好い気持にさせる力を持つてゐる。 | スタア | 『殉教』 |
136 | 処世 | 現状維持というのは、つねに醜悪な思想であり、また、現状破壊というのは、つねに飢え渇いた貧しい思想である。 | 生きる意味を問う―私の人生観 | 『生きる意味を問う―私の人生観』 |
137 | 処世 | 自分を理解しない人間を寄せつけないのは、芸術家として正しい態度である。 芸術家は政治家ぢやないのだから。 | 谷崎朝時代の終焉 | 『決定版 三島由紀夫全集 33巻』 |
138 | 処世 | さまざまな自己欺瞞のうちでも、自嘲はもつとも悪質な自己欺瞞である。 それは他人に媚びることである。 他人が私を見てユーモラスだと思ふ場合に、他人の判断に私を売つてはならぬ。 「御人柄」などと云つて世間が喝采する人は、大ていこの種の売淫常習者である。 | 小説家の休暇 | 『小説家の休暇』 |
139 | 処世 | あらゆる英雄主義を滑稽なものとみなすシニシズムには、必ず肉体的劣等感の影がある。 | 太陽と鉄 | 『太陽と鉄・私の遍歴時代』 |
140 | 処世 | 治りたがらない病人などには本当の病人の資格がない。 | 小説家の休暇 | 『小説家の休暇』 |
141 | 処世 | 一つの悪い評判といふものは、十の悪い評判とつながつてゐるものなんです。 | 女神 | 『女神』 |
142 | 処世 | 告白癖のある友人ほどうるさいものはない。 もてた話、失恋した話を長々ときかせる。 | 告白するなかれ | 『不道徳教育講座』 |
143 | 処世 | 私の幼時の直感、集団といふものは肉体の原理にちがひないといふ直感は正しかつた。 | 太陽と鉄 | 『太陽と鉄・私の遍歴時代』 |
144 | 処世 | 少年期の特長は残酷さです。どんなにセンチメンタルにみえる少年にも、植物的な残酷さがそなはつてゐる。 少女も残酷です。やさしさといふものは、大人のずるさと一緒にしか成長しないものです。 | 教師を内心バカにすべし | 『不道徳教育講座』 |
145 | 処世 | 社会正義を自ら代表してゐるやうな顔をしながら、それ自体が売名であるところの、貧しい弁護士などといふのは滑稽な代物だつた。 | 暁の寺 | 『豊饒の海 第三巻 暁の寺』 |
146 | 処世 | 純粋で美しい者は、そもそも人間の敵なのだといふことを忘れてはいけない。 | 天人五衰 | 『豊饒の海 第四巻 天人五衰』 |
147 | 処世 | 論敵同士などといふものは卑小な関係であり、言葉の上の敵味方なんて、女学生の寄宿舎のそねみ合ひと大差がありません。 | 野口武彦氏への公開状 | 『決定版 三島由紀夫全集 34巻』 |
148 | 処世 | 微笑は、ノー・コメントであり、「判断停止」「分析停止」の要請である。こんなことは社会生活では当たり前のことで、日本のように個人主義の発達しない社会では、微笑が個人の自由を守ってきたのである。しかもそれは礼儀正しさの要請にも叶つている。 | アメリカ人の日本神話 | 『日本人養成講座』 |
149 | 人生 | 老人はいやでも政治的であることを強いられる。 | 天人五衰 | 『豊饒の海 第四巻 天人五衰』 |
150 | 人生 | 法律とは、本来ごく少数者のためのものなのだ。ごく少数の異常な純粋、この世の規矩を外れた熱誠、……それを泥棒や痴情の犯罪と全く同じ同等の《悪》へおとしめようとする機構なのだ。 | 奔馬 | 『豊饒の海 第二巻 奔馬』 |
151 | 人生 | 天才というものは源泉の感情だ。そこまで堀り当てた人が天才だ。 | 河上徹太郎との対談「創作批評 | 『決定版 三島由紀夫全集 39巻』 |
152 | 人生 | 善意も、無心も、十分人を殺すことのできる刃物である。 | 日曜日 | 『決定版 三島由紀夫全集 18巻』 |
153 | 人生 | 生きることが難しいなどといふことは何も自慢になどなりはしないのだ。 | 愛の渇き | 『愛の渇き』 |
154 | 人生 | 人生は夢なれば、妄想はいよいよ美し。 | 戦後語録 | 『決定版 三島由紀夫全集 26巻』 |
155 | 人生 | 若さが幸福を求めるなどといふのは衰退である。 | 絹と明察 | 『絹と明察』 |
156 | 人生 | 嫉妬こそ生きる力だ。 | 盗賊 | 『盗賊』 |
157 | 人生 | 自分の顔と折合いをつけながら、だんだんに年をとってゆくのは賢明な方法である。 | 私の顔 | 『決定版 三島由紀夫全集 28巻』 |
158 | 人生 | 死といふ事実は、いつも目の前に突然あらはれた山壁のやうに、あとに残された人たちには思はれる。 その人たちの不安が、できる限り短時日に山壁の頂きを究めてしまはうとその人たちをかり立てる。 | 罪びと | 『決定版 三島由紀夫全集17巻』 |
159 | 人生 | 何か、極く小さな、どんなありきたりな希望でもよい。それがなくては、人は明日のはうへ生き延びることができない。 | 愛の渇き | 『愛の渇き』 |
160 | 人生 | われわれの死には、自然死にもあれ戦死にもあれ、個性的なところはひとつもない。しかし死は厳密に個人的な事柄で、誰も自分以外の死をわが身に引受けることはできないのだ。 | 死の分量 | 『決定版 三島由紀夫全集 28巻』 |
161 | 人生 | もし、われわれが生の尊厳をそれほど重んじるならば、どうして死の尊厳をも重んじないわけにいくだらうか。いかなる死も、それを犬死と呼ぶことはできないのである。 | 葉隠入門 | 『葉隠入門』 |
162 | 人生 | ほしいものが手に入らないといふ最大の理由は、それを手に入れたいと望んだからだ。 | 暁の寺 | 『豊饒の海 第三巻 暁の寺』 |
163 | 人生 | どんな不キリョウな犬でも、飼ひ馴れれば、可愛くなる。 幸福といふものは、どうしてこんなに不安なのだらう! | 永すぎた春 | 『永すぎた春』 |
164 | 人生 | どんな卑俗な犯罪にも、一種の夢想がつきまとつてゐる。 | 黒蜥蜴 | 『若人よ蘇れ・黒蜥蜴 他一篇』 |
165 | 人生 | ちつぽけな希望に妥協して、この世界が、その希望の形のままに見えて来たらおしまひだ。 | 鏡子の家 | 『鏡子の家』 |
166 | 人生 | この世に一つ幸福があれば必ずそれに対応する不幸が一つある筈だ | 天人五衰 | 『豊饒の海 第四巻 天人五衰』 |
167 | 人生 | いくら成人式をやつたつて、二十代はまだ人生や人間に対して盲らなのさ。大人がしつかりした判断で決めてやつたはうが、結局当人の倖せになるんだ。 | 音楽 | 『音楽』 |
168 | 人生 | この世のもつとも純粋なよろこびは、他人のよろこびを見ることだ。 | 癩王のテラス | 『癩王のテラス』 |
169 | 人生 | 人間に忘却と、それに伴う過去の美化がなかつたら、人間はどうして生に耐えることができるだろう。 | 私の遍歴時代 | 『太陽と鉄・私の遍歴時代』 |
170 | 人生 | 人生のいちばんはじめから、人間はずいぶんいろんなものを諦らめる。 生れて来て何を最初に教はるつて、それは「諦らめる」ことよ。そのうちに大人になつて不幸を幸福だと思ふやうになつたり、何も希まないやうになつてしまふ。 | 夜の向日葵 | 『決定版 三島由紀夫全集 21巻』 |
171 | 人生 | 忘却の早さと、何ごとも重大視しない情感の浅さこそ、人間の最初の老ひの | 私の遍歴時代 | 『太陽と鉄・私の遍歴時代』 |
172 | 人生 | 絶望は安息の一種である。 | 禁色 | 『禁色』 |
173 | 人生 | 自在な力に誘はれて運命もわが手中にと感じる時、却つて人は運命のけはしい斜面を快い速さで辷りおちつゝあるのである。 | 軽王子と衣通姫 | 『殉教』 |
174 | 人生 | まことに人生はままならないもので、生きてゐる人間は多かれ少なかれ喜劇的である。 | 夭折の資格に生きた男――ジェームス・ディーン現象 | 『決定版 三島由紀夫全集 29巻』 |
175 | 人生 | 「武」とは花と散ることであり、「文」とは不朽の花を育てることだ。 | 太陽と鉄 | 『太陽と鉄・私の遍歴時代』 |
176 | 人生 | 傷つきやすい人間ほど、複雑な そして往々この しかしこんな傷を他人に見せてはならぬ。君が見せようと思ふその瞬間に、他人は君のことを「不敵」と呼んでまさに | 小説家の休暇 | 『小説家の休暇』 |
177 | 人生 | 鈍感な人たちは、血が流れなければ狼狽しない。が、血の流れたときは、悲劇は終つてしまつたあとなのである。 | 金閣寺 | 『金閣寺』 |
178 | 人生 | 生きるといふことは、運命の見地に立てば、まるきり詐欺にかけられてゐるやうなものだ。 | 暁の寺 | 『豊饒の海 第三巻 暁の寺』 |
179 | 人生 | 個性とは何か? 弱味を知り、これを強味に転じる居直りです。 | をはりの美学「個性のをはり」 | 『行動学入門』 |
180 | 人生 | 芸術といふのは巨大な夕焼です。一時代のすべての佳いものの | 暁の寺 | 『豊饒の海 第三巻 暁の寺』 |
181 | 人生 | この世には道徳よりもきびしい掟がある | 暁の寺 | 『豊饒の海 第三巻 暁の寺』 |
182 | 人生 | 生きるといふことは、運命の見地に立てば、まるきり詐欺にかけられてゐるやうなものだつた。 そして人間存在とは?人間存在とは不如意だ。 | 暁の寺 | 『豊饒の海 第三巻 暁の寺』 |
183 | 人生 | 自分の人生は暗黒だつた、と宣言することは、人生に対する何か痛切な友情のやうにすら思はれる。 | 暁の寺 | 『豊饒の海 第三巻 暁の寺』 |
184 | 人生 | 何かを拒絶することは又、その拒絶のはうへ向つて自分がいくらか譲歩することでもある。 譲歩が自尊心にほんのりとした淋しさを | 天人五衰 | 『豊饒の海 第四巻 天人五衰』 |
185 | 人生 | 生きることは老いることであり、老いることこそ生きることだつた。 | 天人五衰 | 『豊饒の海 第四巻 天人五衰』 |
186 | 政治 | 僕は、単細胞のせいかもしれないけれど、革命というものはイデオロギーの問題でもなんでもない、ただ爆弾持って駈け出すことだと思っているんです。維新というのも、ただ日本刀持って駈け出すことだと思っている。 | 石川淳との対談「破裂のために集中する」 | 『決定版 三島由紀夫全集 40巻』 |
187 | 政治 | 日本人は絶対、民主主義を守るために死なん。ぼくはアメリカ人にも言うんだけど、「日本人は民主主義のために死なないよ」と前から言っている。今後もそうだろうと思う。 | 福田恆存との対談「文武両道と死の哲学」 | 『決定版 三島由紀夫全集 39巻』 |
188 | 政治 | 伝統は野蛮と爛熟の二つを教へる。真の戦争責任は民衆とその愚昧とにある。政治家は民衆の戦争責任を弾劾しない。彼らは、 | 戦後語録 | 『決定版 三島由紀夫全集 26巻』 |
189 | 政治 | 天皇の本質というものが誤られてしまった。だから石原さんみたいな、つまり非常に無垢ではあるけれども、天皇制廃止論者をつくっちゃった。 | 石原慎太郎との対談「守るべきものの価値--われわれは何を選択するか」 | 『決定版 三島由紀夫全集 40巻』 |
190 | 政治 | 私は民主主義と暗殺はつきもので、共産主義と粛清はつきものだと思っております。共産主義の粛清のほうが数が多いだけ、始末が悪い。たとえば暗殺が全然なかったら、政治家はどんなに不真面目になるか、殺される心配がなかったら、いくらでも嘘がつける。 | 国家革新の原理 | 『文化防衛論』 |
191 | 政治 | 国家がなくなって世界政府ができるなんという夢は、非常に情けない、哀れな夢なんです。 | 国家革新の原理 | 『文化防衛論』 |
192 | 政治 | 決定されているが故に僕らの可能性は無限であり、止められているが故に僕らの飛翔は永遠である。 | わが世代の革命 | 『決定版 三島由紀夫全集 26巻』 |
193 | 政治 | 共産社会に階級がないというのは全くの迷信であって、これは巨大なビューロクラシーの社会であります。そしてこの階級制の蟻のごとき社会にならないために我々の社会が戦わなければならんというふうに私は考えるものですが、日本の例をとってみますと、日本にどういうふうに階級があるのか、まずそれを伺いたい。たとえばアメリカなどは民主主義社会とはいいながら、ヨーロッパよりさらに古い、さらに深い階級意識がある国です。というのは、ヨーロッパを真似して成金が階級をつくったのですね。 ですからこれはアングロ・サクソンの文化の伝統ですが、クラブというのがありますね。みんなメンバーシップオンリーのクラブで、下のクラブの人が上のクラブをステイタス・シンボルとして、ステイタス・クライマーが上流のクラブへ入るためにあらゆる算段をするわけです。(中略) アメリカにはステイタス・シンボルというものが非常にたくさんあります。 | 国家革新の原理 | 『文化防衛論』 |
194 | 政治 | 何を守ればいいんだと。ぼくはね、結局文化だと思うんだ。 | 福田恆存との対談「文武両道と死の哲学」 | 『決定版 三島由紀夫全集 39巻』 |
195 | 政治 | どんな政治体制でも歴史的な基盤があって、徐々に形成されたものであるので、その点では日本の天皇制もまったく同じだと思います。ですから民主主義が悪いとか、天皇制がいいとか悪いとかいう問題じゃなくて、その国その国の歴史的基盤に立った政治体制ができていくということは当然だと思います | 国家革新の原理 | 『文化防衛論』 |
196 | 政治 | いま筋の通ったことをいえば、みんな右翼といわれる。だいたい、“右”というのは、ヨーロッパのことばでは“正しい”という意味なんだから。(笑) | 鶴田浩二との対談「刺客と組長 男の盟約」 | 『決定版 三島由紀夫全集 40巻』 |
197 | 政治 | あらゆる忠義によるラジカルな行動を認めなければ、天皇制の本質を逸すると僕は言っているわけです。場合によっては共産革命だって、もし錦旗革命だったら天皇は認めなければならないでしょうね。天皇制の本質なのかもしれませんよ。それをよく知らないで、右翼だとかファッショだといってバカにしきって戦後共産党がやっていたのは共産党がバカだといいたいね。 | 大島渚との対談「ファシストか革命家か」 | 『決定版 三島由紀夫全集 39巻』 |
198 | 政治 | ・・・資本主義国家も国家が管理している部分が非常に大きくなっておりますから、実際の国家の時代という点では、国家の管理機能はむしろ史上最高ぐらいまで達しているのではないか。 | 国家革新の原理 | 『文化防衛論』 |
199 | 政治 | しかし日本では、神聖、美、伝統、詩、それらのものは、汚れた敬虔な手で汚されるのではなかつた。 これらを思ふ存分汚し、果ては絞め殺してしまふ人々は、全然敬虔さを欠いた、しかし石鹸でよく洗つた、小ぎれいな手をしてゐたのである。 | 天人五衰 | 『豊饒の海 第四巻 天人五衰』 |
200 | 政治 | シヴィリアン・コントロールは、天皇の代りに、総理大臣のために死ぬことではない。 | 団蔵・芸道・再軍備 | 『日本人養成講座』 |
201 | 政治 | 純然たる日本人といふのは、下層階級か危険人物かどちらかなのだ。 これからの日本では、そのどちらも少なくなるだらう。 日本といふ純粋な毒は薄まつて、世界中のどこの国の人の口にも合ふ嗜好品になつたのだ。 | 天人五衰 | 『豊饒の海 第四巻 天人五衰』 |
202 | 政治 | 劇画や漫画の作者がどんな思想を持たうと自由であるが、啓蒙家や教育者や図式的風刺家になつたら、その時点でもうおしまひである。 | 劇画における若者論 | 『日本の名随筆 別巻62 漫画』 |
203 | 政治 | 左翼の奴らは、弾圧すればするほど勢ひを増して来てゐます。日本はやつらの黴菌に蝕まれ、また蝕まれるほど弱い体質に日本をしてしまつたのは、政治家や実業家です。 | 奔馬 | 『豊饒の海 第二巻 奔馬』 |